自分のこと。

日記と自分語り。

【読書メモ】『読書力 (岩波新書)』 齋藤孝


要点

  • 世界的に評価の高かった日本の教育力は失われつつある。これを取り戻すには国民の「読書力」を上げなけらばならない。
  • 読書の意義とは自己形成である。人間は読書を通じて優れた他者と会話することで、総合的に成長することができる。
  • 「総合的成長」とは、他者を理解する力、会話力、コミュニケーション能力、情報処理能力、教養、知性、精神力、倫理観……など、枚挙に遑がない。

引用ベストスリー

1. 「読書経験が生きてくるのは、五分前、十分前、二十分前に話された相手の言葉を引用して会話にくみこめる技においてだ。現在の文脈には出てこない、いわば、既に地下に潜ってしまった水脈を、もう一度掘り起こすのである。」p.156
2. 「人間の総合的な成長は、優れた人との対話を通じて育まれる。しかし、本ならば、現在生きていない人でも、優れた人との話を聞くことができる。優れた人との出会いが、向上心を刺激し、人間性を高める。」p.59
3. 「ゲーテと私とは時と場所も離れた関係にある。こちらから積極的に本を読まなければ、向こうからは来てくれない。訪ねていって話を聞く。そうしたゲーテ家の「門を叩く」という構えがなければ、出会いが起きない。」p.62


1.「読書経験が生きてくるのは、五分前、十分前、二十分前に話された相手の言葉を引用して会話にくみこめる技においてだ。現在の文脈には出てこない、いわば、既に地下に潜ってしまった水脈を、もう一度掘り起こすのである。」p.156
読書によってコミュニケーション力が高まることの実例。この引用は、相手の話の文脈を理解していなければできない芸当であり、相手は自分の話が届いたことを喜ぶ。自分もこの会話の中での引用が好きで、よくやろうとする。もっと読書経験を積んで、より上手に引用できるようになりたい。


2.「人間の総合的な成長は、優れた人との対話を通じて育まれる。しかし、本ならば、現在生きていない人でも、優れた人との話を聞くことができる。優れた人との出会いが、向上心を刺激し、人間性を高める。」p.59
読書そのものの意義、古典を読む意義をまとめて教示している一文。これから古典に手を出そうとしていた自分は、この文によって勇気づけられた。他人に読書の意義を説く時には是非引用したい。


3.「ゲーテと私とは時と場所も離れた関係にある。こちらから積極的に本を読まなければ、向こうからは来てくれない。訪ねていって話を聞く。そうしたゲーテ家の「門を叩く」という構えがなければ、出会いが起きない。」p.62
こちらではゲーテを例に挙げて、古典を読むことの意義がより具体的に説かれている。また、この文章は「読書とは著者と読者の会話である」ということも示していて、そこも好きなポイントだ。著者の齋藤氏がゲーテに会いに行くイメージが浮かぶ。

感想

かなり好きな本だ。
著者の齋藤孝氏により読書の意義が丁寧に説かれている。もし、自分が他者に読書の意義を説明しようとするなら、本書の言葉を多数引用することになるだろう。
斎藤氏は今年『究極 読書の全技術(KADOKAWA)』を上梓していて、こちらでは読書の意義に加えて、読書のテクニックについても手厚くカバーされている。あえて比較すると、読書の意義、特に古典や文学を読むことの意義について集中的に学びたいのであれば『読書力』を、それに加えてネット検索や電子書籍との付き合い方、洗練された読書テクニックも学びたいのであれば『究極 読書の全技術』を読むのが良い、といったところだろうか。どちらも素晴らしいんだけども。

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